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荒金さとみの試論
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荒金さとみ試論-【考察】性別適合施術SRSは必要か?

2019/12/19

荒金さとみ試論-【考察】

性別適合施術SRSは必要か?

まず、この話題に触れる前に本記事に書かれていることはあくまでも筆者個人としての見解であり、性別適合施術手術を受けるか否かは当事者個人の自由意思に委ねられるものであり、個人の自由・利益を害するものではないことを予めお断りした上でお話します。

🔶性別適合施術とは

性別適合施術(SRS,Sex Reassignment Surgery)とは、平たく言えば、性別の不一致の状態、性同一性障害を抱える者に対し、当事者の性同一性に合わせて外科的手法により形態を変更する手術療法のうちの、内外性器に関する手術を指す。

(性別適合施術 – Wikipedia)

ただし、この施術を受ければ望む性別と身体を手にいれられるという簡単な話ではない。

性別適合施術を受ける理由として、自身の性器そのものに醜形的な違和感を伴い、なおかつ施術によって得られた新たな性器が自分の身体に適合する(相応しい)と考えるなら性別適合施術はその人にとって必要であると考えるのが妥当であるが、自身の性器に対する醜形的な違和感を伴う場合を除いて性別適合施術は一切不要と筆者は考えている。これからその理由について考察していこう。

🔶性別適合施術と法律の問題

この「性別適合施術」というキーワードについては性同一性障害当事者でもある筆者自身が7年もの間惑わされてきた。男性→女性になりたい(MtF,Male to Fmale)性別違和を抱えていたころ、最終的に性別適合施術を受けることができれば『女性として生きられる』と考えていたからだ。性別適合施術を受け、性同一性障害特例法

(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律 – Wikipedia)に基づき性別の取扱いの変更の審判の申し立てが認められていたならば女性として生活できていたに違いないが、『なぜ性別適合施術を受けることが性別変更の条件となるのか?』という当たり前のようで当たり前とは思えない疑問に行き着き施術を躊躇するに至った。当たり前のようで当たり前とは思えない疑問については決して難しく考える必要はないが、何がおかしいのかをハッキリとさせるため噛み砕いて説明しよう。

 

性別適合施術とは、性同一性障害を抱える当事者に対し、男性または女性という自己意識(心の性)に身体的特徴(身体の性)を適合させるための施術と考えられているが、性同一性障害特例法では性別適合施術を受け「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」を前提条件としたうえで戸籍の性別の変更が可能となる。だがしかし、この施術で形態を変更できるのは特例法の前提条件で挙げられる状態と同様に内外性器だけに限られており、身体的特徴(顔を含めた容姿)を変えるのとは程遠い趣旨の施術であると感じられる。本来、人間が男性女性という性別カテゴリーに含まれるためには、男性女性どちらかの特徴を人間という特徴に兼ね備えていなければ人間でしかないわけだが、そんな哲学的な本質の話をするつもりはない。だが、その性別の特徴といえるものを特例法では生殖器に限定しているため、自己意識(心の性)に身体的特徴(顔を含めた容姿)を適合させるというより、社会に身体的特徴(戸籍の性別)を適合させるためにあるような施術だと筆者は感じる。

🔶当事者が性別適合施術を望む理由の一つには社会的理由が最も多く挙げられる。

施術を受けるに至っては法律や社会といった外的要因によって当事者自身が施術を望む妥当性(理由)までもが変化すると考えられる。すべての当事者が高額な施術費用とリスクを伴ってまで施術を望んでいるわけではないが、戸籍の性別認定制度を基準とした日本社会では男女どちらかの性別でなければ就職も厳しく、運よく採用に至っても性同一性障害であることを知られれば性的マイノリティーとして扱われ、人事を含め周りはどう接して良いかがわからず当事者はトイレや更衣室などで一線を置かれたような扱いをされがちだ。このような場合、たとえ当事者が施術まで望んでいなくとも施術を望まざるえない意識へと変化が起きることも十分考えられるのだ。また、性別適合施術を条件に戸籍の性別を変えることのできる法律は場合によっては手術まで望んではいない当事者が『性別の取扱いの変更の審判』を受けるためやむなく手術を受けるなど、目的と手段を履き違える恐れがあることを考慮に入れなければならない。

倫理や哲学の教養講義などで「ロボトミー」という言葉を耳にしたことはあるだろうか?ロボトミーとは、心の問題を身体の問題として処理するものであり、精神的な疾患を器官的な疾患の治療で解決できると考える<メタ病理学>を上位基礎とした施術療法であるが、特例法の前提条件を満たすために施術を受けることはそれと理由がよく似ている。先にも述べたが、性同一性障害特例法が性別適合施術を性別変更の前提条件とすることは、当事者自身が施術を望む妥当性(理由)までもが変化する環境下において目的と手段を履き違える恐れがある。つまり、戸籍の性別を変えるための手段として器官的な施術を受けるのであるため、ロボトミーと同じ行為を法律の一規範で行ってしまうことに他ならないのだ。

🔶SRSを受けた後も闘いは続く

たとえ性別が女性になったとしても周りが元男性であることを周知している以上、高額な施術を受け戸籍の性別を変更することに自体に意味がなくなってしまう。また、筆者が女性名へ改名し変更申し立ての許可が通った後の話だが、パスポート用に戸籍謄本を取り寄せたとき戸籍謄本にも変更を行った痕跡が残っていることに気づいたこともある。これではSRSを受けたところで元男性であった事実を完全には隠しきれない。そして一番頭にくるのは日本年金機構だ。性同一性障害で戸籍の性別を変更した当事者へ付与される二枚目の年金手帳に記載されている基礎年金番号のうち10桁中4桁が共通の通し番号となっていたことが2013年ニュースで波紋を呼んだが、そのことについてもいまだ表立っての謝罪は確認できていない。(2013年5月10日、共通番号の説明を記載した内部マニュアルが公開されていた件について田村憲久厚労省が謝罪) だが、日本年金機構は戸籍に何らか変更が加わった後も基礎年金番号を変更しないのはもとより、元の名前の年金手帳すら交換する気がない始末。もちろん年金手帳ごと紛失した旨を役所に伝えれば新しい名前が印字された年金手帳は新規で発行可能だが、こんなにやる気のない日本の行政から法律で認められるためだけに、わざわざ高額な施術費用とリスクを伴ってまで施術を受けるのはどうかと思う。(←胸糞悪くなったらごめんなさい)

🔶施術を受けるべき場合もある。

ここまで書きたい放題批判してきたわけだが、性別適合施術を施す医師には罪はない。むしろ、当事者を助けるという善意と熱意がなければあのような高度かつ術後の外見までもを考慮にいれた施術は不可能であるからだ。

性別適合施術+性同一性障害特例法の前提条件が合わさることによって目的と手段を履き違え悪として作用することを前述まで吟味してきたが、自身の性器そのものに醜形的な違和感を伴う場合には施術を受けるべき場合ある。かつて筆者もこの醜形恐怖を伴う違和感と闘ってきたわけだが、ズボンを下ろす度、とてもじゃなく耐えられるものではなかった。その後アソコの毛という毛を毎日剃って脱毛し、次第に違和感がなくなり今に至る。違和感を伴う場合、施術を受けるべき場合もあり、脱毛からはじめるという選択肢もあることを考えた上で決めたほうがよいかもしれない。

ただ、先にも述べたとおり、この施術で形態を変更できるのはパンツの中に隠れている内外性器だけに限られており、身体的特徴(顔を含めた容姿)を変えるのとは程遠い趣旨の施術であることを理解しておかねばならない。

🔶筆者について

現在、男性の身体のままAV女優として活動していますが、以前は会社でMTFとして受けいれられ女性として働いていました。あのころは何をするにも性別がネックとなり、仕事をするうえで男らしさを出さなければならない場面は数多くありました。毎日300人の社員が出入りする構内で周りが性別(男性)を知りながら女性として働いていたので、ひそひそ噂されたり軽蔑を受けたりで本当に苦痛でした。そんなこともあり、他の当事者と同様にSRSを受ければ煩わしさから解放されると考えていた時期もありましたが、今回記事にした理由から躊躇しました。

これまでは女性として生きることばかりを目指していましたが、ネットで活躍する女装子や男の娘という存在を知り、男性でありながら女装できることを取り柄としたほうが人生はこれまでの何倍も楽しくなると考えるようになり、“今の性を活かす”ことに決めました。

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性同一性障害=障害という言葉がつくため日本語特有の観念がいまだ根付いていますが、性別のことばかりをハンデにしてしまうと何もかもが苦しく感じられてしまうので、“今の性を活かす”という表現を使いました。そして、自分が『女装好きの中性的な男の子』であるとカミングアウトし、男性女性どちらの特性も活かして仕事をはじめてからは周りも上手く理解してくれるようになり、これまでにないほど人生を楽しめています。

とはいえ、学校や会社では「男らしさ、女らしさ」という性別を押しつけるような規則がいまだにあるのも事実です。休みの日に女装を見つかっただけで公序良俗違反を引き合いにした頭の悪い会社もありましたが、トランスジェンダーへの配慮以前に個人の自由と利益を害する行為こそ公序良俗違反犯なので当事者のみなさまには負けずに強く生きてほしいという願いを込めて、これからもコラムの執筆に励んでいこうと思っております。

                                                                                                                                       作成日[2019/12/18],最終更新[2019/12/18]荒金さとみ

荒金さとみの試論
著者:荒金さとみ
会社でひっそりと女性として埋没していた性同一性障害当事者(MtF)でしたが、 女装することのできる今の性別を活かしたほうが『人生はこれまでの何倍も楽しくなる』と思ったので会社を退職しオトコノ娘モデルとして活動をはじめました。 現在は AV 女優になる夢を叶え、イベント・執筆・撮影モデルとしても活動中。
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